心地よい象徴的な音の追求心地よい象徴的な音の追求

耳に届く“全体の音”をデザインする

サウンドデザイナーである私は、効果音(SE)制作やキャラクターのボイス収録を中心に担当しています。しかし、サウンドデザイナーの仕事はそれだけにとどまりません。ゲームでは、効果音やボイスはもちろん、それ以外にもBGMや環境音などさまざまな音が同時に鳴っています。そのひとつひとつを意識しながら適切なバランスで調整し、どの場面でもお客様が気持ちよくプレイできるよう、耳に届く“全体の音”をデザインすることも、サウンドデザイナーの大切な役割です。たとえば、キャラクターの動きや状況に合わせて、SE・BGM・環境音が違和感なく鳴るように調整するといった仕事がこれにあたります。

また、サウンドの仕事は、ゲーム開発の終盤になってから音を付ける最後の工程というイメージを持たれることが多いかもしれません。しかし実際には、開発の比較的早い段階から、サウンドの仕組みの検証を行ったり、音を使った遊びのアイデアをサウンドチームから提案したりすることも少なくありません。他のセクションのスタッフと議論を重ねながら、サウンドに関わる体験そのものを設計していく――それが任天堂のサウンドデザイナーの仕事です。

“心地よい象徴的な音”を目指して

私がサウンドデザイナーとして関わった『ドンキーコング バナンザ』では、SEに加えて、ドンキーコングや相棒の少女ポリーンのボイスも担当しました。このゲームの大きな特徴の一つに、ドンキーコングが激しく胸を叩く“ドラミング”によって変身し、パワーアップする演出があります。私は、このシーンの音づくりにおいて、「この音を聴けば『バナンザ』のドンキーコングだ!」と直感的に感じてもらえる象徴性のある音に仕上げることが重要だと考えました。当初はアニメーションに合わせて一定のドラムのキックのような音だけを鳴らしていましたが、それだと個性やバナンザ変身に向かっていく高揚感がなく、心地よい手応えもありませんでした。そこでドラミングによるバナンザ変身時に、通常のステージBGMからドンキーコングの相棒であるポリーンの歌の曲に切り替わるという点に着目し、ドラミングを歌の曲が始まる“イントロ”として捉える発想に切り替えたのです。具体的には、一定のキック音を鳴らすのではなく、DJが曲を開始させるようなイメージで、レコードのスクラッチ音を取り入れました。また、胸を叩く回数が増えるにつれ、歌の曲がもうすぐ開始するという高揚感を高められるように、ドラムのキック音をクレッシェンドさせました。それに加えて、より音楽的な厚みとドンキーコングのコミカルさを表現するためにボイスパーカッションの音も重ね、今作らしいユニークなサウンドに仕上げました。

ドラミング

一方で、操作方法に関する課題もありました。ドラミングはL/Rボタン同時押しだけでなく、Joy-Con 2 を振っても発動できるため、どちらの操作でも気持ちのいい手応えになる音作りが必要でした。特にJoy-Con 2 を振る操作では、人によって振る速度が異なるため、通常のような1つの決まった尺の効果音だけでは対応できません。そこで、スクラッチ音やパーカッション音を細かく分割し、プレイヤーの操作に合わせて最適なタイミングで音を再生する特殊な実装を行いました。この工夫により、どちらの操作方法でも心地よいドラミング演出を実現できたと思います。

ドラミングの音は、ゲームをプレイされるお客様が何十回、何百回と聴くことになります。そのため、自分でも開発期間中に何度も聴き直し、少しでも違和感があれば修正するということを繰り返し、長い期間をかけてようやく完成させることができたのです。

挑戦を後押ししてくれる土壌

任天堂には、「まずは試してみよう」「検証してみよう」という姿勢を尊重し、挑戦を後押ししてくれる土壌があります。そして、自分のアイデアをさらに良い方向に広げてくれる仲間が多くいることも、大きな魅力です。こうした環境のなかで、気持ちのいい音づくりを日々追求し、その結果、生み出されたサウンドが、世界中のお客様に届く――それこそが、サウンドデザイナーとして最高のやりがいであり、この仕事の最大の魅力だと感じています。

社員略歴

鈴木さん企画制作部/2016年入社
2016年キャリア採用で入社。
サウンドデザイナーとして、Nintendo Switch『スーパーマリオ オデッセイ』(2017年)、Nintendo Switch『リングフィット アドベンチャー』(2019年)、Nintendo Switch『スーパーマリオ 3Dワールド + フューリーワールド』(2021年)、Nintendo Switch 2『ドンキーコング バナンザ』(2025年)の開発に関わる。Nintendo Switch 2『ドンキーコング バナンザ』の追加コンテンツ「DKアイランド&エメラルドラッシュ」(2025年)では、サウンドデザインリードを務める。
職種データ

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